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教育は格差を再生産するのか——『教育脳』が揺さぶった、私の教育観

教育は格差を再生産するのか——『教育脳』が揺さぶった、私の教育観

「なぜ、あんなにも学歴にこだわる人が世の中にいるのだろう?」

そんな疑問を、ずっと心の隅に持ち続けていました。

今日はその疑問に、ある本の一節がひとつの光を当ててくれた話をしたいと思います。

結論がすっきり出た話ではありません。むしろ、考えながら書いている。そういう意味では中途半端な記事かもしれませんが、正直な今の私の思索として、読んでいただけたらと思います。

こんにちは。進学空間Moveの宮脇です。

一冊の本が問いを立てた

今、手元に『教育脳』という本があります。

慶應義塾大学の行動遺伝学の名誉教授・安藤寿康先生が書かれた本で、心理学・行動遺伝学の観点から教育を論じた一冊です。読みやすく、しかし内容は深い。名著の一つだと感じながら、いま夢中で読んでいます。

その中に、気になる一節がありました。フランスの社会学者・ピエール・ブルデューの考え方を紹介する箇所です。

ブルデューは教育を、「単なる知識の伝達の場でも、人間形成の場でもなく、社会階層の再生産と不平等の維持に関与する制度」として捉えました。安藤先生もその側面を否定せず、ある程度肯定的に紹介されています。

読んだとき、正直、ざわっとしました。

「なるほど」と思ってしまった複雑さ

私はもともと、学歴に過度にこだわる風潮に批判的な立場をとってきました。

学歴そのものが人生を決めるわけではなく、むしろ学力——つまり、考える力、問題を解く力、学び続ける力——こそが長い人生において本当に大切だと思ってきたのです。

人生100年時代と言われる今、18歳時点の学歴を以前ほど重要視する必要はなくなっているはずだ、と。

もちろん、難関大学に進むことで深い学問に触れ、より広く・より深く社会に貢献できる人材になりやすいという側面はあります。そこは素直に応援したい。でも、学歴でマウントを取ったり取られたりする社会の風潮には、ずっと違和感を覚えてきました。

ところが、ブルデューの視点を通してみると、腑に落ちてしまったのです。

なぜこんなにも多くの人が、学力よりも学歴にこだわるのか。なぜ偏差値や大学名がこれほど人々を動かすのか。

それは、教育が社会階層の格差を維持・再生産する機能を担っているから——そう考えると、妙に合点がいく。

歴史上のさまざまな「平等社会」の試みを振り返っても、人が集団をつくる限り、何らかの階層差は生まれてきます。そして、その階層の「上位」に入るための競争として、教育制度が機能している側面は確かにある。

それを「おかしい」と言う立場でさえ、すでに終わりのない競争社会の一部として取り込まれている——。

そう言われると、少し嫌な感じもしますけどね。ただ、「そういう構造が確かにある」とは、言わざるを得ないのです。

苦しい動機では、人は伸びない

少し難しい話が続きましたが——ここで立ち止まって考えなければならないことがあります。

「社会階層の上位に入るために勉強する」というモチベーションのあり方は、心理学的に見て非常に危ういのです。

これはフィア・アピール(恐怖訴求)や外発的動機と呼ばれるもので、簡単に言えば、「落ちこぼれたくない」「負けたくない」という恐怖や焦りを原動力にした学習姿勢です。

安藤先生もこの点を懸念されていますが、私も塾の現場でその危うさを実感してきました。

受験が終わった瞬間に深海魚のように沈んでしまう生徒——中学受験でも高校受験でも大学受験でも、そういった話はよく耳にします。あれは多くの場合、「勉強の本質的な面白さ」ではなく「階級競争に勝つこと」を目的にしてきた結果として現れるものだと思っています。

目標達成の瞬間に燃え尽きてしまう。それは意志の弱さではなく、動機の設計の問題なのです。

頑張っているのに報われない感覚。あれほど辛いものはありません。

外発的動機だけで机に向かい続けることは、それ自体が非常に苦しい。苦しいから続かない。続かないから伸びない。そういう悪循環が生まれやすい。それが正直なところです。

それでも、楽しさを伝え続けたい

では、「社会的格差を再生産する機能を教育が担っている」という現実を前に、私たちはどう向き合えばいいのでしょう。

その側面を無視することはできません。そこから目を背けることは、かえって子どもたちを傷つける可能性があります。

だからこそ、私はその構造を「知った上で」、勉強そのものをいかに楽しめるかを伝え続けたいと思うのです。

知ることの面白さ。考えることの快感。わからなかったことがわかった瞬間の、あの感覚。

昨日まで解けなかった問題がスッとほどけた瞬間、生徒の表情がぱっと変わる——その顔を、私は何度も見てきました。ああいう瞬間のために、この仕事をしているのだと思います。

勉強そのものが楽しいと気づいた子は、受験が終わっても学び続けます。それは、どんな学歴よりも長く使える力です。

塾長として、その一点だけはぶれずにいたい。そんなことを、『教育脳』の一節をきっかけに改めて思いました。

ぜひ皆さんも、手に取ってみてください。読み応えのある一冊です。

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進学空間Move塾長

宮脇慎也(Shinya Miyawaki)

27歳で広島大学社会科学研究科の博士課程後期日程を単位取得退学をし、その後学習塾の世界に飛び込む。

8年間の勤務講師としてみた広島の学習塾業界のあり方と大学院で養った知見との乖離に悩み、理想の学習塾を作るべく2013年に個別演習型の学習塾・進学空間Moveを立ち上げる。

その中で、モチベーションのあり方に着目し続ける中で、キャリア教育の重要性を認識し、キャリア教育と学習の融合を目指す。また、同時に保護者の方向けコミュニティー「Happy Education Lab.」を主催する。

1977年生。射手座。B型。

家族は妻と長男1人。趣味は広島発祥のスポーツ・エスキーテニス。

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